2020年02月22日

3月中旬に現代書館から『加害者家族バッシング−世間学から考える−』が刊行されます。

 2020年3月中旬に、新刊『加害者家族バッシング−世間学から考える−』(現代書館)が出ます。ニッポン特有の加害者家族へのひどいバッシングは、「人に迷惑をかけてはならない」などといった、「世間」の同調圧力の異様なつよさがあることを論じたものです。
 以下のサイトに本の紹介があります。
 http://www.gendaishokan.co.jp/article/A00001.htm

 内容は以下の通りです。

加害者家族バッシング
 世間学から考える

3月中旬発売予定

佐藤直樹 著
四六判変型 並製 200頁
予価1800円+税 
ISBN978-4-7684-5875-4

欧米(特にキリスト教国)では、加害者家族がバッシングされることはあり得ない。何故、日本では加害者の家族が世間からバッシングを受け、時には自死に至るまで責められるのか。本書では世間学の観点に立ち、加害者家族へのバッシングの構造を、@「世間」の構造、Aなぜ、〈近代家族〉が定着しなかったか、Bなぜ、犯罪率が低いのか、Cなぜ、自殺率が高いのか、という角度から解き明かし、その背後にある、ニッポンの「世間」の閉塞感・息苦しさ・生きづらさを解除するための手がかりを探る。

【著者紹介・担当編集者より】
1951年、仙台市生まれ。新潟大学人文学部法学科卒。新潟大学大学院修士課程修了。
九州大学大学院博士後期課程単位取得退学。
1999年、「日本世間学会」創立、初代代表幹事。九州工業大学名誉教授。

【主な目次】

はじめに――なぜ、加害者家族問題なのか
第1章 ニッポンにしかない「世間」――世間学の概要
第2章 親(家)は責任を取れ――ニッポンにおける〈近代家族〉の不在
第3章 安全・安心の国ニッポン――同調圧力のつよさとケガレ
第4章 死んでお詫びします――「高度な自己規制」の異様さ
おわりに――「自分は自分。他人は他人」と考える

なぜ加害者家族が自殺しなければいけないのか?
欧米には存在しない日本特有の概念
「世間」に抵抗できない真因を追究!






posted by satonaoki at 15:18| NEWS

2020年01月07日

「西日本新聞」(2020年1月5日)に「『社会は変えられる』ものだ」が掲載されました。

 2020年1月5日付け「西日本新聞」に、「『社会は変えられる」ものだ この国の未来」と題したエッセイが掲載されました。
 
 期間限定ですが、以下でご覧になれます。
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/573309/
 
 内容は以下の通りです。

          「社会は変えられる」ものだ 佐藤直樹氏

 ◆この国の未来

 税金を使っての地元支持者の大量ご招待に、内閣府による疑惑の出席者名簿廃棄等々。「桜を見る会」騒動で終わった2019年だった。安倍晋三首相の露骨なオトモダチやミウチ優遇も見苦しいが、この問題が深刻だと思うのは、首相のアタマの中から、仲間ウチの外側にあるはずの「社会」が、きれいさっぱり抜け落ちていることである。
 しかもこれは、政治だけの問題ではない。仲間ウチで盛り上がるだけで、社会が見えていないという点では、昨今の若者の「バイトテロ」も同じだ。また「君の名は。」に続き、昨年ヒットした新海誠監督の「天気の子」。セカイ系とよばれるこれらの映画では、恋愛など個人的な営みが、隕石(いんせき)衝突や気候危機など世界の大問題に直結して描かれる。
 社会学者の土井隆義さんによれば、セカイ系では中間項の社会の領域が欠落し、社会自体を変えようという発想がない。日本青少年研究所の高校生の生活意識調査では、「現状を変えようとするより、そのまま受け入れたほうが楽に暮らせる」と答えた若者が、1980年に約25%であったのが、2011年には約57%に倍増しているそうだ。
 「社会変革」や「社会改革」という言葉があるように、社会の特徴はそれが変えられることにある。そもそも社会は江戸時代にはなく、明治時代の西欧化=近代化の過程で、1877年頃にsociety(ソサエティー)を翻訳した造語である。ではこの140年ほどの間に、本来の意味での社会がこの国に定着したかといえば、私はかなりアヤシイと思っている。
 しかし海外に目をやれば、昨年「香港に再び栄光あれ」というプロテストソングまで誕生させた、香港デモの担い手となった若者たちは、社会を変えられると思っている。お隣の韓国でも頻繁にデモがあり、政治のあり方に大きな影響を与えている。
 私が危惧するのは、今年も「桜を見る会」のような騒ぎが続発することで、ますます社会が忘れられ、「何も変わらない」という一種の宿命論が蔓延(まんえん)することだ。置かれている政治状況は海外とは異なるが、この国の未来に希望を見いだすために必要なのは、「社会は変えられる」という原理原則を、けっして手放さないことである。
      ◇        ◇
 佐藤 直樹(さとう・なおき)九州工業大名誉教授 1951年生まれ、仙台市出身。九州大大学院博士後期課程単位取得退学。専門は世間学、現代評論、刑事法学。「日本世間学会」幹事。新刊「加害者家族バッシング」が1月末に出る。






posted by satonaoki at 16:45| NEWS

2019年11月17日

「北海道新聞」(2019年11月16日)に「ひきこもり115万人の衝撃」が掲載されました。

 2019年11月16日に「北海道新聞」の「各自核論」のコーナーに、「ひきこもり115万人の衝撃 迷惑かけない思考 捨てよ」が掲載されました。
 日本に特有のひきこもりの背景には、学校にせよ職場にせよ、他国にはないような「世間」の同調圧力の強さがあることを明らかにしました。
 内容は以下の通りです。

   ひきこもり115万人の衝撃−迷惑かけない 思考捨てよ−
                                九州工業大学名誉教授 佐藤 直樹
    
 東京・練馬区で農水省の元事務次官が、長期間のひきこもりと家庭内暴力が絶えなかった息子を殺害するという、衝撃的な事件が6月におきた。その動機について元次官は、ひきこもりの男性が小学校の児童ら20人を殺傷し自殺した、5月の川崎市の通り魔事件のようになることを恐れ、「周囲に迷惑をかけたくないと思った」と供述したという。
内閣府の最新の調査によれば、ひきこもり当事者の推計数は、若年(15〜39歳)が54・1万人、中高年(40〜64歳)が61・3万人で、なんと115万人以上になるそうだ。この異常な数の多さと、「8050問題」に象徴されるひきこもりの長期化・深刻化は、日本に特有の「世間」の存在を考えないと説明がつかない、と私は思っている。
 確かに海外にもひきこもりは存在し、韓国が少し多いが、日本ほど大規模に起きている国はない。またHikikomoriは英訳できずに、そのまま英語になっている。言葉が存在しないということは、欧米では、それが特に注目されるような現象ではないからだ。
千年以上の歴史がある伝統的な「世間」は、「出る杭は打たれる」と言うように、異質なものを排除する傾向がつよく、海外では考えられない独特の同調圧力を生みだしている。これが、この国の驚異的な犯罪率の低さと、先進工業国中最悪の自殺率の高さをもたらしており、ひきこもりの大きな要因となっているのだ。
 不登校がひきこもりのきっかけともなる学校では、「ブラック校則」に代表されるように、「みんな同じ」という同調圧力がつよい。また、児童・生徒の間では、クラスのなかで「やさしい関係」を強いられ、お互い空気を読まなければならない。そして不登校は学校の問題ではなく、「発達障害」などと言われ、個人の病理の問題にされてきた。
 また職場においては、特にこの20年ぐらいの間に、「新自由主義」の台頭で成果主義が浸透し、お互い無理な競争を強いられ、うつ病や過労自殺を含む過労死が激増している。Karoshi もそのまま英語になっているが、これは欧米では、仕事は生きるためにするのであって、仕事が原因で亡くなる過労死など、およそ考えられないからである。
 学校や職場からはじかれ排除された場合、安心できる居場所となりうるのは家族しかない。ところが日本の家族は、伝統的に「世間」からつよい圧力を受け、つねに「世間体」を気にしているので、ひきこもりを「恥」と考えがちである。このため、問題を外部に相談することを躊躇する。それが、現在の長期化・深刻化をもたらしているのだ。
 私が練馬区の事件で驚いたのは、近所の住民たちの話として、「息子さんがいるなんて知らなかった」という報道があったことである。おそらく元次官は、ひきこもりの息子がいることを恥と感じ、世間体を考えて、周囲には隠しておいたのではないか。
 海外とは異なりこの国では、家族に不祥事があった場合に、「親も責任を取れ」と「世間」から非難される。そのため多くの日本人は、家庭で「人に迷惑をかけてはならない」と言われて育ってくるからである。息子殺害の動機となった、「周囲に迷惑をかけたくない」という言葉に示されているように、元次官も家庭できっとそう言われて育ち、また自分の息子にもそう言って教育してきたはずである。
 だが、私たちは大なり小なり「人に迷惑をかけて」生きている。障害者もそういう存在だし、誰だって高齢者になれば「人に迷惑をかける」存在となる。だからいま必要なのは、「人に迷惑をかけてはならない」という思考を、きっぱりと捨て去ることである。

 さとう・なおき 1951年宮城県生まれ。現代評論家。専門は世間学、現代評論、刑事法学。「日本世間学会」幹事。著書に「目くじら社会の人間関係」「犯罪の世間学」など多数。



 
posted by satonaoki at 12:16| NEWS