2016年10月27日

11月5日(土)日本世間学会第36回研究大会で報告します。

 2016年11月5日(土)に東京で開催される日本世間学会第36回研究大会で報告します。報告テーマは「少年法適用年齢引下げと『世間』」です。
 概要は、「選挙年齢の引き下げがおこなわれたことを契機に、少年法の適用年齢も20 歳未満から18 歳未満に、引き下げるべきだと自民党が提言し、現在法務省がその準備を進めている。この背景にあるのは、80 年代以降の子どもの『小さな大人』化と、90 年代末以降の『世間』の復活による『保守化』であることを考察する」というものです。

 ●大会の開催場所等は、以下の通りです。

 日時/2016年11月5日(土) 1:30pm〜5:50pm
 場所/キャンパス・イノベーションセンター5F
  〒108-0023 東京都港区芝浦3 − 3 − 6
 [交通]JR田町駅東口徒歩1 分
  東京工業大学附属科学技術高校の隣り

 ●当日配布予定の報告内容のレジュメは、以下の通りです。

             ●少年法適用年齢引下げと「世間」
           ━━━━━━━━━━━━━━━━━━
           11/5/2016 日本世間学会第36回研究大会
              佐藤 直樹(現代評論家)
              http//www.satonaoki.com

● 「子ども期」の登場と保護主義の成立
・ヨーロッパ中世⇒「幼児」7/8 歳〜徒弟修業「小さな大人」(アリエス)⇒口頭の世界・文化の伝承が声によっておこなわれる⇒「一次的な声の文化」(オング)
・12世紀〜文化の伝承が文字によっておこなわれる⇒「文字の文化」(オング)
・17世紀末〜「学校化」(アリエス)⇒関心のまなざし⇒「子ども期」の登場
・19世紀⇒刑法に規定⇒自由主義(夜警国家)段階⇒「自由意思で犯罪をおかした小さな大人」⇒責任主義⇒「犯罪−責任−処罰」
・1899年イリノイ少年裁判所法の成立⇒帝国主義(福祉国家)段階⇒「環境の犠牲者としての子ども」⇒保護主義⇒「評価−予防−処遇」⇒大人と分離した少年の特別な扱い
・「処罰福祉主義」(ガーランド)の成立⇒国家の刑事司法への介入
 
● 子どもの「小さな大人」化と厳罰化
・1980年代〜子どもの「小さな大人」化
 @高度資本主義=高度消費社会の出現⇨市場経済の浸透
 Aテレビ・パソコン・スマホなど電子メディアの普及⇒口頭の世界の復活
・電話、ラジオ、テレビ⇒「二次的な声の文化」(オング)
・90年代末〜グローバル化=新自由主義の台頭⇒自己責任論⇒「自由意思で犯罪をおかした小さな大人」
・97年「神戸連続児童殺傷事件」⇒厳罰化(逆送年齢の引き下げ等)のきっかけ
・99年「光市母子殺害事件」の死刑判決⇒「処罰福祉主義」の後退
・他の先進国のように犯罪率の増加がないのに厳罰化が進む

● 後期近代における「世間」への<再埋め込み>(ギデンズ)
・世間論⇒近代化=西欧化の過程でsociety の形成が十分になされず「世間」が連綿とのこる
 ⇒法は社会に属する概念
 @「贈与・互酬の関係」⇒「お返し」が必須
A「身分制」⇒年上・年下、格上・格下
 B「共通の時間意識」⇒個人individualの不在/人間平等主義(中根)
 C「呪術性」⇒大安、友引
・近代化=<脱埋め込み>によって共同体は解体していったが、「世間」という幻想の共同性が負荷的・抑圧的なものとして強固にのこる
・<埋め込み>的な共同体的紐帯や掟の解体
 ⇒行動の準拠点としての「みんなどうしているのだろうか」(滝川)
・98〜03年「伝統離脱」から「伝統志向」への保守化の動き(NHK放送文化研究所)
・西欧⇒人種・民族・宗教への<再埋め込み> 
日本⇒「世間」への<再埋め込み>
・「小さな大人」化⇒「プチ世間」の形成
  KY⇒「空気とは世間が流動化したもの」(鴻上)
 「プレゼント」⇒「贈与・互酬の関係」「あの世、パワースポット」⇒「呪術性」 
 「宿命主義」(土井)⇒「身分制」

● 少年法適用年齢引下げをどう考えるか
・犯罪率の減少⇒少年司法の運用の成功?
 日本⇒先進国中犯罪率は最も低く/自殺率は最も高い⇒「世間」の犯罪抑止力と自殺誘発性の高さ
・「幼児」「子ども/大人期」「老人期」の成立(ポストマン)
 ⇒成熟した「小さな大人」と未熟な「大きな子ども」の混在
⇒成人年齢の引上げが必要?              

〔参考文献〕
・阿部謹也『「世間」論序説』(朝日選書、1999年)『近代化と世間』(朝日新書、2006年)
・P・アリエス(杉山光信他訳)『<子供>の誕生』(みすず書房、1980年)
・NHK放送文化研究所編『現代日本人の意識構造[第八版]』(NHKブックス、2015年)
・W・J・オング(桜井直文他訳)『声の文化と文字の文化』(藤原書店、1991年)
・D.Garland, The Culture of Control, Oxford University Press, 2001.  
・A・ギデンズ(松尾精文他訳)『近代とはいかなる時代か?』(而立書房、1993年)
・鴻上尚史『「空気」と「世間」』(講談社現代新書、2009年)
・小宮信夫『なぜ「あの場所」は犯罪を引き寄せるのか』(青春新書、2015年)
・Nobuo Komiya, A Cultural Study of the Low Crime Rate in Japan, British Journa l of Criminology, 39(3), 1999.
・佐藤直樹「少年法の『保護主義』の相対化のために」(『法政理論』25巻4号、1993年)『増補版 大人の<責任>、子どもの<責任>』(青弓社、1998年)「のっぺりとした『大人/子ども』時代が始まった」別冊宝島編集部編『「子育て」崩壊!』(宝島社文庫、2000年)『「世間」の現象学』(青弓社、2001年)『世間の目』(光文社、2004年)『刑法39条はもういらない』(青弓社、2006年)『暴走する「世間」』(バジリコ、2008年)『暴走する「世間」で生きのびるためのお作法』(講談社+α新書、2009年 )『なぜ日本人はとりあえず謝るのか』(PHP新書、2011年)「厳罰化と『世間』」(『法政理論』45巻 4号、2013年)『なぜ日本人は世間と寝たがるのか』(春秋社、2013年)『犯罪の世間学』(青弓社、2015年)
・滝川一廣「日本の近代化と『世間』の生成」世間心理学会編『自己・他者・「世間」の心理学』(学習院大学人文科学研究所、2013年)。
・土井隆義『少年犯罪<減少>のパラドクス』(岩波書店、2012年)「『再埋め込み』の時代」(「社会学ジャーナル」37号、2012年)
・中根千枝『タテ社会の人間関係』(講談社現代新書、1967年)
・A・M・プラット(藤本哲也他訳)『児童救済運動』(中央大学出版部、1989年)
・N・ポストマン(小柴一訳)『子どもはもういない』(新樹社、2001年)
・J・ヤング(青木秀男他訳)『排除型社会』(洛北出版、2007年)
posted by satonaoki at 12:28| NEWS