2020年09月13日

「西日本新聞」(2020年9月9日)に「長期政権考」が掲載されました。

2020年9月9日の「西日本新聞」に「長期政権考−どんどん強まった同調圧力 政治への諦めまん延−」が掲載されました。安倍政権が長期にわたった理由として、「世間」における同調圧力が強まった結果、政治に対する諦めや無力感が社会に広まったことを指摘しました。

内容は以下の通りです。

長期政権考−安倍一強の7年8カ月− どんどん強まった同調圧力

 じつに7年8カ月の長きにわたった第2次安倍政権が終焉した。戦後政治の中でもこの政権がとりわけ異様に感じるのは、自らの権力基盤の維持のために、自分の仲間ウチへロコツな利益供与をおこない、政権への「忖度」といった「世間のルール」を発動させることで、たびたび「法のルール」を否定したり、あるいはそれをねじ曲げてきたことだ。
 例えば、財務省の公文書改ざんに関わった職員を自殺にまで追い込んだ「森友学園事件」。仲間ウチへの公金横流しというべき「加計学園事件」。公金を使っての地元支持者の大量ご招待と、内閣府による出席者名簿の廃棄疑惑の「桜を見る会」。そして極め付きは、爆発的に広がった「ツイッターデモ」で頓挫したが、仲間ウチの検事長の定年延長をもくろんだ「検察庁法改正」という、「法のルール」の否定やねじ曲げの所業の数々。
 この異様さにもかかわらず、なぜ長期にわたり政権が支持されたのか? 私の考えでは、ここ20年ぐらいの間に日本の社会では、「世間」が暴走して「保守化」が進み、「忖度しろ」とか「空気読め」といった同調圧力が、どんどん強まっているからである。
 とくに昨今の新型コロナ禍という「非常時」にあって、海外では「命令」と「罰則」による強制的な「法のルール」で対処した。だが日本では、強制的な「法のルール」によらず、「自粛」と「要請」というゆるい手段で、それなりに効果を発揮した。これで必要十分だったのは、「自粛警察」の登場に象徴されるように、自粛や要請に応じない者に対して「空気読め」という、他国にはない強い同調圧力がかけられたからである。
 もともと日本人は、万葉の時代以来の「世間」という伝統的な人間関係を残してきたために、「世間のルール」にがんじがらめに縛られてきた。これは、しばしば「法のルール」の否定やねじ曲げにつながる。コロナ感染者や医療従事者に対する苛烈な差別が頻発するのは、権利や人権などの「法のルール」が、いまだに社会に定着していないからだ。
 「社会変革(改革)」という言葉はあるが、「世間変革(改革)」という言葉はない。「世間」は所与のものと考えられており、変化を徹底して嫌う。「世間のルール」に支配されるこの国では、タレントが政治的発言をすればネットで叩かれるという、およそ他国では信じがたいことがふつうに起きる。同調圧力で、事実上「表現の自由」が奪われているのだ。そのため、政治に対する諦めや無力感が社会全体にまん延することになった。
 それ故、安倍政権がかくも長期にわたった理由は、「世間」の強い同調圧力が生みだした、政治に対する諦めや無力感にあったのではないか。この構図は今後も変わらないだろう。次期政権の有力候補は、安倍政権の路線を継承するという。まさかね。仲間ウチを優遇し、「法のルール」を否定したりねじ曲げるような愚を「継承」することはない、と信じたい。

posted by satonaoki at 13:44| NEWS

2020年8月20日に読売テレビの「かんさい情報ネットten.」にビデオ出演しました。

2020年8月20日、関西の読売テレビ「かんさい情報ネットten.」という番組にビデオ出演しました。コロナ禍における同調圧力の根底に、1000年以上続いてきた「世間」があることを指摘しました。
posted by satonaoki at 13:18| NEWS