「西日本新聞」(2020年12月27日)の「年の終わりに」で「コロナ禍が語る同調圧力」が掲載されました。
期間限定で以下でご覧になれます。
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/677314/
内容は以下の通りです。
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コロナ禍が語る同調圧力
新語・流行語の年間大賞に「3密」が選ばれ、ノミネートされた言葉も新型コロナウィルス関連が大半。まさにコロナ禍に始まり、コロナ禍に終わった2020年であった。全世界の風景を一変させた、この未曾有の厄災がはからずも露呈させたのは、ノミネート語にもなった「自粛警察」の登場に象徴される、この国の同調圧力の異様な強さだ。
もちろん同調圧力は、大なり小なりどこの国にもある。だが日本の特異さは、その根底に「世間」の暴走があったことだ。たとえばこの国では、コロナ感染者があたかも犯罪者のようにみなされ差別されるが、欧米ではまずありえない。漫画家のヤマザキマリさんは、イタリアでは「いわゆる感染者差別というのは全くと言っていいくらい、ない。病気での差別は数百年前までのプリミティブな(原始的な)人間のやることだと捉えている」という。
感染者差別が起きるのは、日本社会が1000年以上歴史のある伝統的な「世間」に縛られており、現在でも犯罪や病気を呪術的なケガレと考えるからだ。じつは欧州でも「世間」にあたるものが存在したのだが、11・12世紀以降に消滅した。これがイタリアで「プリミティブ」といわれるのは、かつて欧州でも差別の歴史があったからである。
近年インターネットの普及で誰もが自由に発信できるようになったが、皮肉なことにコロナ禍においては、スマホが手軽な隣組や国防婦人会と化している。その結果、感染者の氏名・住所等の個人情報がネットにさらされ、差別やバッシングが頻発するようになった。
日本ではSNSの匿名率がきわめて高い。総務省の『情報通信白書』によれば、ツイッターの匿名率はじつに75.1%。米35.7%、英31%、仏45%、韓国31.5%等と比べて突出している。その理由は、「世間」の同調圧力があまりに強いため、実名では個人を特定され叩かれることを恐れるからだ。しかしこのネットの匿名性こそが、俗にいう「旅の恥はかき捨て」状態をひきおこし、感染者への差別やバッシングを生み出す温床となっている。
それ故、「世間」の暴走を止めるためにいま必要なのは、ネットにアップする前に、それが実名でも発信できる内容なのか、まず自分に問いかけてみることである。
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2020年12月28日
「西日本新聞」(2020年12月27日)に「コロナ禍が語る同調圧力」が掲載されました。
posted by satonaoki at 16:45| NEWS